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上達のために

 

  剣道には長い歴史があり、多くの人々がその技を習得するため必死で稽古をしてきました。昔ならばその習得した内容は秘伝として決して他人には洩らさなかったことでしょうが、今はありがたいことに、各種の稽古会や講習会で多くのアドバイスをいただくことができます。

 

 この項ではそのような内容を書き留めておきたいと思います。いろいろなアドバイスがあり、時には正反対の内容もあるかもしれませんが、自分納得できるものを何か一つ選んで稽古にとりいれると格段な進歩を実感できるでしょう。

 

 

 

忘れないように

 神奈川県剣道連盟主催の審判講習会の時のことです。講師の先生が「剣道上達の秘訣を教えましょうか。」

参加者は、何が聞けるかとじっと先生の顔を注視しました。しばらくあって「それは忘れないことです。」とひとこと。

 

 「自分の欠点、悪い癖など、いろいろなけいこの場面でアドバイスをうけたり、自分自身で気がついたりします。しかし、すぐ忘れてまた同じことを言われたり、気づいたりの繰り返しです。言われたことを一つしっかり頭にいれて毎回のけいこに臨めば早く上達するのです。」ということを話されました。みんななるほどと納得です。

 

 忘れないように、紙に書いて壁に貼ったり、ノートにメモしたりいろいろ自分に合った方法を、見つけ実行してはいかがでしょうか。私はけい古日誌を書くようにしています。日誌と言うよりメモ程度です。稽古をした相手の名前と気づきを2、3行メモします。昇段審査に大いに役立ちました。

聞くということ

 最近受けた講習会でのこと、講師の先生からこんなアドバイスがありました。「いろいろ迷ったり、わからないことがあったら、聞いたらいいですよ。自分で考えることもいいことだけど、聞いた方が早くわかることもある。」

 

 剣道では「技は盗め」とか「百錬自得(たくさんけい古して自分で答えをみつけること)」とかよく言われます。そう言えば、道場で質問を受けることは少ないように思います。しかし、いろいろわからなかったら、悩んでいたらもっと積極的に質問してみてはどうでしょうか。質問し話を聞くうち、さらに一歩踏み込んだアドバイスが聞けることが少なくありません。指導者や仲間といろいろ相談しながらけい古をすれば、興味も、面白みも増えるのではないでしょうか。

左足の引きつけ

 打った後左足をすぐに引きつけ、次の動作に備えるのは基本の中でも特に大事だといわれるのですが、これがなかなかに難しいものです。私の経験で、ひとつだけ役立ったことがありますので、紹介しましょう。  

 

 それは打ったとき、踏み込んだ右足が床にトンとついた瞬間、右足のひざをすっと伸ばすことです。そうすると自然に左足が前に出てきます。左足の引きつけが遅い人は、打った時、体が前に傾いていることが多いようです。

 体が前に傾くと倒れないようにバランスをとるために、左足は自然と後ろに残るのです。そこで右のひざをすっと伸ばすことで傾いた体を引き起こすと左足が前に出るというわけです。ぜひためしてください。

 

呼吸が大事

 基本打ちや切り返しの時の気合いの出し方を思い浮かべてください。「ヤーッ!メーン」という気合いが多いと思いま

す。このとき呼吸をどうするかが重要です。人の力は息を吸ってたまり、吐くときに放出されます。これを考えると、

息を吸って、吐きながら「ヤーッ!メーン」と連続して声を出しながら打つのは理にかなった打ち方とは言えません。最

初の「ヤーッ」で半分くらいの息が吐き出されて、かんじんの面を打つときには力は抜けています。面を打つ時にこそ一

気に吐き出すようにしないといい打ちが出ません。ではどうするか。

 

 まず構えを整えて息を吸い、最初の「ヤーッ!」を大きく声を出し、息を吐き切ります。ここまではまだ打突動作には入

りません。その後すぐに腹いっぱい(胸いっぱいではなく)息を吸います。そして振りかぶり、続く面打ちでもう一度、大きく一気に「メーン!」と吐き出します。

 

 習慣的にやっていた「ヤーッ!メーン」という気合いの出し方は、実は呼吸法を教えていたのだということに、最近気づ

きました。実際に意識してやってみるとなるほどしっかりと打てる手ごたえがあります。

先人の教え

 

 多くの人にけい古をつけていただき、同時に、心に残る「ことば」をいただきました。これまで私のメモとして「筆者雑感」のページに記してきましたが、改めて読み返すと実に奥深い剣道の要諦があることに気付きました。そこでページを移し、今後の教えも随時追加して充実した記事にしていこうと思います。タイトルも「先人の教え」としました。昔ならばとうてい教わることのできないような奥義にもやすやすと触れることのできる現代です。言葉をしっかり記憶し、それを

実践することが上達の近道であることはまちがいありません。

 

●剣道はガマンと残心だ

 

●剣道では。「気」と「機」の一致が大事だ。気持ちだけ先走っては打てない。気を充実させて機を探り、一致したとこ

 ろを打つようにしなければならない。

 

●相手に合わせて動いては「気」と「機」を一致させることはできない。相手が出たら引く、引いたら出る。横に動いた

 ら横に動くというようでは難しい。出てきたら攻め押さえ、引いたら攻め込みというようにつねに攻めているとついに

 は相手は苦しくなって打とうとする。そこが「機」である。

 

●左手は心である。相手の動きで左手が動いたということは心が動いた証拠。左手は打つときだけ動かせ。あとは動かす

  な。

 

●必ず中心を取ってから打て。中心を取らないまま打つからななめ打ちになる。

 

●中心を取ったらすぐ打て。中心を取ったまま構えているとまた取り返されてしまう。

 

●けい古をすると思うな。「真剣勝負」をしているという気持ちでやれ。真剣勝負をしないと上手にはならない。

 

●剣道は気迫が大切。気迫は力を超える。

 

●一眼二足三胆四力(イチガン ニソク サンタン シリキ)

 剣道で大切なものを順にあげたものです。一番は目。すなわち相手を観察する注意力のことです。相手の力量を見抜き、

 癖を見抜き、技を看取る。見取けい古という言葉があるくらい、見るということは大事なことです。

 二番目は足はこび。ここでは二足と書きましたが、二左足(ニサソク)という教えもあるそうです。左足の運びは常日頃か 

 ら言われています。

 三番目は胆力、肝っ玉。思いきって行けというところ。そして四番目にやっと力、つまり技が出てきます

 この順番は日ごろのけい古の心構えを説いています。

 

私が教わったこと

 

  剣道は「打って勝つのではなく、勝って打て」と教わりました。はじめて聞いた時は「?????」 意味がわかりませんでした。

 それから何十年。多くの先生方から稽古をつけていただき、アドバイスをいただき、稽古を重ねる中で、その意味が少しずつわかりかけてきました。

 剣道の動作は打つ前と、打つ時、そして打った後に分けて考えることができます。打つ時のことというのは、いつもやっている打突の技のこと、そして打った後のことと言うのはは残心。

 残る一つが打つ前のこと。「勝って打て」と言うのはここを言っているのです。つまり、相手が防ぐことも返すこともできないような状況を作って、そして打てと言うことです。

 では、打つ前にすることとは何でしょうか。さらに細かく考えてみると、まず「構え」。この構えの中には気持ちの構え、体の構えがあります。そして「攻め」。ここにも気持ちの攻め、剣の攻め、足の攻め、左手の攻めなどたくさんの攻めがあります。どれをとってもいろいろな教えがあり、一つ一つを言葉で理解できても、体がおいついていかないのが現実です。毎日毎日練習を重ねてやっとできるかどうか。一生が稽古と言われるところかもしれません。

 そんな難しいことですが、これまでに教わったことをできるだけわかりやすくと思って整理してみました。10項目あります。この中には構えも、攻めも入っています。これを頭に入れて毎日の稽古で実践し、できるようになれば剣道が格段に進歩するはずです。

 私自身そう信じて稽古をしています。

 

  1、立ちあがっていきなり間合いに入るな

  2、やたらと気合をかけるな。空気を吐くと気が抜ける。

  3、触刃の間(先革が触れる位)で相手を探る。構えが硬いか柔らかいか。 反応が早いかそうでも無いかなど。

  4、相手を探る過程で中心を取る。

  5、中心をとったら体勢を整える。背筋を伸ばし、左ひかがみを伸ばし踏ん張る。

  6、息を吸い込み腹に納めて肩や腕の力を抜く。(ここが大切)

  7、納めると同時に、グッと前に出る。ただし歩幅を大きくすると、とっさの対応ができないので注意。

  8、相手の反応を見る。(これが“タメ”)動かなければさらに出る。3回ぐらい出ると相手は動く。

    (左足を常にふんばり瞬時に出られる体勢を保って出る。)

  9、相手のどこかにわずかでも動きが見えたら、思い切って面か小手を打つ。

 10、返される、抜かれるは全く気にしない。自分を捨てて打つ。

 

 

 

やっぱり気合いは大切だ [けいこ]




 けい古のときに一番注意されるのは「気合い」ですね。気合いが足りない!声を出せ!と。なぜ
こんなに気合いのことをいうのでしょう。

 先日(4月18日)の夜。けい古のあとにテレビを見ていたら、気合いと筋力(筋肉のちから)の
関係の実験をやっていました。NHKの「解体新ショー」という番組です。ゲストが体に測定器をつ
けてどのくらいの力がでるか試していました。まずだまって力を出します。次にそれぞれに声を
出してもう一度トライします。「ギャオー」「ヨイショ」「トリャー」
 その結果、やはりおどろくような結果が出ました。男性ゲストで25%アップ。女性ゲストで8%
アップです。

 医学的に言うと脳の扁桃体と言う部分の働きによるものなのだそうです。一番簡単に能力をアップ
する方法が気合いと言うことがよくわかりました。

 実験のあとゲストの「どういう気合いがいいのですか?」との質問がありました。それにはやは
り母音(ア.イ.ウ.エ.オ)が良いでしょうとの答。そういえば剣道形では「ヤー」「トー」という気合
いを出しますが、このときの口の形はアとオ。口が一番大きく開き空気の流れも音のひびきも一番
いい形ですね。

 25%アップだけでなく、大きな声を出すメリットはまだまだたくさんあります。ぜひためしてく
ださい。

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